FOMC利上げを前におさらい。長期金利と名目成長率の関係 | Akatsuki Financial Report
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FOMC利上げを前におさらい。長期金利と名目成長率の関係

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日銀が異次元緩和を発表してもう3年の月日が経つが、長らく続いた景気低迷もようやく突破口を見つけ、現在は回復傾向にある。一時期は急激なインフレ率の上昇によって800兆円にも及ぶ中長期国債の金利が跳ね上がる懸念もされたが、11月30日終値で0.015%と金利上昇による財政赤字の悪化の水準には達していないようだ。もとより国債保有者の9割が国内であること、日銀が0金利政策を推し進めてきたことが最大の要因といえるだろうが(債権買い支え含む)、債権市場のコントロールに関しては見事な対応を見せてきたのではないか。株式、為替とも連動し、外的要因に影響されやすいこの市場での立ち振る舞いが日本10年債の安定的な人気につながったと言えよう。
ただ、日銀自らが認めた景気対策の失敗は決して軽んじられてはならないものである。低迷してきた名目成長率はここ数年クォーター別でマイナス水準にまで落ち込むこともあり、2016年第3Qでは0.2%とマイナス圏からは脱出したものの、通年だとかなり微妙な結果となりそうだ。
そこで今回は今一度長期金利と名目成長率の関係に着目してみようと思う。12月にはFOMCの利上げも控えているようなので、かるい復習程度になれば幸いである。

名目成長率と長期金利の関係

Red Fall Arrow Interest Percent Symbol. Financial Business Concept

Red Fall Arrow Interest Percent Symbol. Financial Business Concept


金融緩和でインフレ、金利の上昇を起こすことが出来、あとは中央銀行が政府の当座預金に増加した金額を金融政策によってどの方向に仕向けるかで大まかなマネーフローのレイアウトが決まってくる。債権価格の下支えをすることによって、金利を一定以下の水準にし、市場に資金を回らせ、不良債権の件数を減少させることが出来る。言うまでもなくこれは民間の設備投資や雇用の安定につながり、よい景気循環をもたらす。しかし、日本の場合は民間が投資に踏み切れず、内部留保金を増やしてしまったことにシステムが機能不全を起こした原因があるのだが、消費が伸び悩む中での判断だったのだから仕方がない。
逆に言えば日本企業は今、相当量の内部留保金を抱えており、今後景気が回復局面に向かった場合に大規模な設備投資や雇用拡大をしてくる可能性は高いとみる。そうなるとGDP成長率が向上する見通しは大きい。そういった観点からも金利と名目成長率は極めて重要な指標の一つと言えよう。
この問題を言い換えると

金融緩和が名目成長率と長期金利のどちらを引き上げるか

という問いに置き換えることが出来ることがわかる。成長率>金利であった場合、利払い費を歳入でカバー出来、財政赤字縮小の可能性もある一方で、金利>成長率であった場合、利払い費用が拡大して財政赤字が拡大する可能性もある。現在の日本は第3Q決算が名目成長率0.2%,長期金利が0.015%の差し引き0.185%の成長率優勢である。現在の先進国の水準からみると決して悪くない数字である。金利が上昇すると成長率が押し込まれて次第にデフレ傾向となるが、次第に金利が成長率に追いついてデフレは終息する。逆に金利が低下すると成長率が経済を押し上げてインフレ傾向になり、それに引きつられて金利も上昇するため、インフレは終息する。お互いがバランスシートのような関係にあるのだが、このシステムが上手く機能しない例がある。

米国を襲ったスタグフレーション

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70年代に二度のオイルショックを経験した米国は大幅な原油高でスタグフレーションを経験した。経済の停滞と物価の持続的な上昇によって雇用機会、賃金の減少をもたらす現象である。需要が変化しない中で、外的要因によって価格が上昇、それに伴う取引量の減少でフィリップス曲線は右にずれるという算段だ。慢性的な供給不足が継続するこの最悪なインフレーションはポールボルガ―の高金利政策によって抑え込まれたが、拡張的なマクロ経済の恐ろしさを十分にアメリカ国民に見せつけた。
現在のアメリカは成長率0.28~1.28%を織り込んだ長期金利が2.78%、インフレ率が1%と安定した状態なのだが、米国だけでなく主要経済大国の成長率と金利の関係は安定連動しているといっていいだろう。ドイツとアメリカの10年債利回りは名目GDP成長率を平均して1.5~2.5%上回っており、先進国の長期金利は名目成長率+1.5~2.5%で推移している。ただ、金利の水準に関しては市場参加者の思惑もあり、一方向に振れすぎとの指摘もある。