ECBの陰りと迫りくるイタリア崩壊の足音 | Akatsuki Financial Report
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ECBの陰りと迫りくるイタリア崩壊の足音

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イタリアでは4日に憲法改正法案の国民投票が行われ、賛成40.9%,反対59.1%で否決となった。この結果に伴いレンツィ首相が辞任。このブログでもふれたとおり、もはやEUにイタリアの民意の求心力はなく、これからは反EUに対しての動きが活発化していくと思われる。
そんななかで短期的に具現化しそうなイタリア国内の3大リスクを取り上げていきたい。

イタリアの銀行の信用力低下による国債利回りの上昇

前回はベイルイン介入云々という話をしたが、いよいよ本格的にEU並びにECBとの対立が表面化してきそうな勢いである。今回の国民投票自体も「政治のねじれ」をなくすためにEU側からの提案を呑んだ形で行われたのだが、裏ではベイルイン導入か否かの民意を問う選挙だったわけである。これが否決となってしまうと債権者の損失負担なしに公的資金投入はありえないとするECB側と国民の怒りを買わない形で不良債権処理問題を進めたい政府側との思惑でズレが生じてしまう。かといって銀行救済の余力があるわけではなく、ユーロ内最悪の債務国から多くの財政出動を望むのは難しい。
となると銀行側の資本増強に頼るしかないのだが、政府系ファンドの買いは入っているものの大手投機筋は業務改善の信用保証を求めており、現状イタリアの銀行株に「買い」の判断を下せずにいる。リーマンが破綻直後の紙切れの水準とは程遠く、なおかつ政府側、ECB側からの救済が不透明となるならば買い渋るのは当然の選択であろう。八方ふさがりの状況の中で銀行側は迅速な再建への道のりを歩まなければならない。
ECBも堪忍袋の緒が切れかかっているのは確かで、モンテバスキの資本増強期限延長を拒否して明確な二択を突きつけるとともに先日行われたECB理事会では債権の買い入れ額を減少方向に下方修正した。この局面でECBが手じまい感を表明したことによってイタリア銀行株は打撃を受けたとともに、投資家の確保がより難しくなったといえるだろう。政治的混乱に続く経済的混乱でイタリアは窮地に立たされている。
本題の利回りの話をしよう。先述の通り、イタリアの利回り上昇は政治的混乱+アンチエスタブリッシュメントが主な鯨飲となり、国債売りを誘発することによって利回り上昇に寄与している。この場合の長期金利上昇はインフレ期待や、毛基準間ではなく、明らかなマイナス材料によってもたらされていることを念頭においてほしい。
加えて、イタリアの政府債務はユーロの中でも飛びぬけて悪い水準であり、2017年は対国内総生産の133.1%に達すると予想されている。運の悪いことにイタリア国債の3割が非居住者によって保有されており、彼らが世界景気に影響される形で債券を売り飛ばす可能性もある。
ただし、ECBは金融緩和政策の一環で資産購入プログラムを実施中であり、国債を中心に年間800億ユーロ規模の債券を購入している。2017年4月からは600億ユーロに減額となるかわりに期間の延長が認められた。この枠組みの中でイタリア国債の買い入れ増額が可能なことから、市場ではこのQEプログラムが保険となって銀行デフォルトのストッパーの役割を果たすとみられており、それ故に国債、銀行債の暴落もないのだが、EUから離脱するとなると一気に信用力が低下して価格のレジスタンスラインが破壊されるのは目に見えている。

ECBの最終兵器

これだけでもイタリアにとってEU残留の意義は経済的に大きいことを示したが、ECBは世間に出していない最終兵器を隠し持っており、いよいよイタリアがデフォルト寸前にまで陥ったらこれらのプログラムを実行してくると思われる。まずはOMT(債券購入プログラム)である。残存期間が1~3か月の債券が対象で、発動に際して厳格な条件が付与される。2012年9月の発表以来、実績は0だが万が一、ユーロ危機に陥るようなことがあれば、奥の手として出してくる可能性がある。現行のQEを債券ベースで拡張させる財政政策だが、ユーロというとてつもない大きな基盤の中で機能するかは未知数であるし、市場のリアクションは不透明である。仮にこれでも通貨安が収まらなかったり、国家の破たん危機が再燃するようなことがあれば更なる奥の手的手段であるESM(欧州通貨メカニズム)を使ってくるだろう。4720億ユーロ(56兆円)の利用枠が残っており、国債売りの抑止力としては最強レベルの流動性を供給できる。
ただ、EU離脱の選択をしてしまうとこれらのサポートを受けれないだけでなく、ポピュリズム運動を推進する「五つ星運動」に政権が渡ってしまうようなことがあれば、財政規律が失われ、更なる金利上昇になる可能性もある。

イタリア銀行システムは杞憂か

モンテバスキは現在50億ユーロの増資と280億ユーロの不良債権問題処理を行っているが、政治的混乱もあり、どうも寄り付きが悪い。他の大手銀も民間資本による増資を計画しているのだが、一部は転換債に転換するなどして債権者に割を食わる形で自己資本を増強している。債権者にとってはここで転換債に鞍替えしなければ、銀行債は銀行のデフォルトで無価値となる。かといってこれを拒絶すれば銀行のデフォルトをECBが救済する際にベイルインが適用され8%の損失負担を強いられる。なんとも債権者泣かせの問題なのだが、実はドイツでも同様の現象が起こっており、ドイツ中銀がCOCO債を発券することによって自己資本増強を行っているのだ。米国内でのサブプライムローン証券の販売による損失、またそれに伴う米財務省からの賠償請求が重なり、投資銀行として活躍してきたドイツ銀は破綻寸前にまで追い込まれている。ただ、ドイツ中銀の場合は世界の銀行システムの中心にいるため「大きすぎて潰せない存在」であるためにあらゆる手段で破綻を防ぐことが今後予想される。
そうはいってられないのがイタリアで、国内では家計が約2000億ユーロ分の銀行債を保持しており、銀行の増資計画に委ねられている状況である。仮に各行の増資計画がうまくいって、下方圧力が後退したとしても信用力に劣る地方銀行はどうすればいのだろうか。